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「肉を切らせて骨を断つ」この言葉が似合うチームは、チーム・バビグリンをおいて他にはないだろう。グラウンドに突如現れた巫女が始球式で華やかに舞い、平常心を失って舞い上がる相手は気付いたら失点を積み重ねていく…。こんなドラマのような戦いは、これまで目にしたことがない。

始球式を執り行うチーム・バビグリンの三番・藤咲(55)とはにかみ気味の一番・成田(2)

毎年開幕戦恒例の、バビ・メイツ(関連女子をそう呼ぶとのこと)によるコスプレ始球式。残念ながらそれ以上の情報は秘密とのことで、謎に包まれているが、両チームに大きな影響を与えたことは間違いないだろう。

初回の攻防と、その後の両チームの明暗

試合は、この始球式直後に、日本橋裏本町軟式野球部が3点を先制するところから始まった。突然の美女の登場で、打線に火が付いたのだろう。

勢いに乗る日本橋裏本町軟式野球部。だが、この試合はそう簡単にはいかなかった。1回裏。先頭の成田は四球を選ぶ。初回にいきなり3点を先制された後の攻撃である。普通なら力が入ってしまってもおかしくないが、彼は四球を狙ってもぎ取ったのだと語る。

リーグ最多盗塁王も視野に入れているチーム・バビグリンの一番・成田(2)

「初回に四球を取るのは、自分ができる最大のチームへの貢献。仲間に多くの球を見せる、相手投手のリズムを乱すことが大事で、本当はバンバン打ちたいが、あえてこの役割に徹する」との職人魂である。この成田の作戦は功を奏し、チームは4点を奪って逆転。完全に試合の主導権を握り、最終的には大差で圧倒する文句のないゲーム運びを見せた。

老肩にチームを背負ってマウンドに立つチーム・バビグリンの先発・浮田(11)

チーム・バビグリンの浮田は「始球式は相手が舞い上がって効果絶大だが、同時に自チームも舞い上がって試合に集中できないのが玉に瑕」と自嘲気味に語るが、上手に冷静さを取り戻し、理想の戦い方へとつなげられたのは1番打者の四球に違いない。これが、「肉を切らせて骨を断つ」チーム・バビグリンの戦いの真骨頂である。

勝っても負けても気持ちよく、日本橋裏本町軟式野球部のスタイル

生まれた時からカープファンと公言する日本橋裏本町軟式野球部の監督で三番打者の市道 仁(3)

「良いプレーは良いプレーとし、敵味方関係なく称賛する」これが、日本橋裏本町軟式野球部イズムだ。チーム全体としてのレベルアップが課題としながらも、対戦後の相手からも褒められる自身のチームについて、市道はこう語る。「特別なことはしませんが、挨拶などで積極的に相手チームとコミュニケーションを取ることを大事にしている」

当たり前のことだが、試合は相手チームがあって初めて成立する。試合で勝ち負けはつくが、相手も同じ野球を愛する仲間であり、互いに気持ちよくプレーし、気持ちよく帰る。この当たり前のようなことの大切さを、改めて日本橋裏本町軟式野球部が気付く機会を与えてくれたといえるだろう。